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債務整理について

 債務整理事件について解説しています。債務整理に関するご相談は無料で受け付けております。

第1 債務整理とは


 債務整理とは、債務(貸金業者からの借入金、クレジットカードによる買い物代金など)の総額の減免、支払方法の変更(支払月額の減少、支払期間の延長)により、債務者の負担を軽減し、経済的再生を図るための手続です。
 弁護士による債務整理の主な方法は、任意整理、自己破産、個人再生です。また、違法金融業者(ヤミ金)の対処が必要な場合もあります。その他に、消滅時効や相続放棄により、債務を免れられる場合もあります。


第2 弁護士による債務整理の特徴

1 受任通知の送付

 弁護士が債務整理を受任した場合は、まず、債権者に対して受任通知を送付し、債権者に対する支払いを停止します。受任通知を受け取った貸金業者などは、正当な理由なく、債務者本人に請求することは禁止されています。
 債権者に対する支払いを停止した状態で、債務の調査や家計の見直しを行い、債務整理の方針検討をし、返済計画の作成や自己破産・個人再生申立ての準備を行います 。

2 利息制限法による引き直し計算

 債務整理では、法律上、弁済が必要な債務を特定するために、利息制限法による引き直し計算を行います。
 利息制限法とは、金銭の貸付けにおける利息を規制する法律です。債権者が利息制限法の制限利率(年15〜18%)を超える利息で金銭の貸付けをしている場合は、利息制限法の引直し計算をすることによって、債権者が主張する債務額より法律上弁済が必要な債務額が少なかったり、過払金が発生していたりする場合があります。
 近年は、金融機関、貸金業者やカード会社の約定利息が利息制限法の制限利率(年15〜20%)以内であることが一般的であり、多くの場合は、利息制限法による引き直し計算をしても、債務額の減少や過払金の発生がありません。
 しかし、金利規制が見直された平成22年(2010年)以前に金銭の借入れをしていた場合は、利息制限法の制限利率を超える利息を支払っている可能性があるため、利息制限法による引直し計算によって、債務額の減少や過払金の発生の可能性があります。

3 弁護士費用

 弁護士による債務整理には弁護士費用が発生します。
 当事務所では、弁護士費用の分割払いが可能です。また、収入及び資産が一定の基準を下回る場合は、法テラスによる援助を受けることもできます(生活保護を受給している場合は、法テラスによる援助金の返還が免除される場合があります。)。

4 信用情報の登録

 債務整理(支払停止)を行った場合、信用情報機関に、事故情報として登録されます。信用情報機関とは、銀行、貸金業者、カード会社などの利用者の契約内容は支払状況などの情報(信用情報)を管理している機関です。信用情報機関としては、日本信用情報機構(JICC)、CIC、全国銀行個人信用情報センターがあります。
 銀行、貸金業者、カード会社などは、信用情報機関に登録されている信用情報を与信審査に利用します。このため、その後5〜10年程度は、新たに、借入れをしたり、クレジットカードの発行を受けたりすることが難しくなります。
 債務整理を行うにあたっては、その後、借入れやクレジットカードに頼らず、収入の範囲内での生活を心がけることが必要となります


第3 弁護士による債務整理の方法

1 任意整理

(1)任意整理とは
 任意整理とは、裁判外で、債権者と個別に交渉をし、支払額や支払方法についての合意(和解)をする手続です。
(2)任意整理による和解内容
 弁護士による債務整理では、一般的に、経過利息・損害金と将来利息・損害金をカットし、残元本について、おおむね3〜5年間の分割払い(36回〜60回)で支払う内容の和解を求めて交渉します。

2 自己破産

(1)自己破産とは
 破産手続とは、裁判所において、財産を処分して債権者への弁済(配当)し、弁済し切れない債務の免除(免責)を受ける手続です。このうち、債務者自身が破産手続の申立てをする場合を自己破産といいます。
(2)自己破産しても処分しなくてもよい財産(自由財産)
 自己破産では、債務者の財産を処分して、債権者に対する弁済などに充てます。しかし、すべての財産が処分の対象となるのではなく、債務者は一定の財産を持ち続けることができます。このような財産を「自由財産」といいます。
 主な自由財産は、99万円以下の現金、差押禁止財産(年金、家財道具など)、新得財産(破産手続開始後に取得した財産)です。東京地方裁判所では、20万円以下の資産(預貯金、保険の解約返戻金、自動車など)も自由財産として扱う運用がとられています。なお、退職金は、退職してはじめて受け取ることができることから、破産時点では、退職金見込額の8分の1を超える金額(8分の1が20万円以下の場合は全額)が自由財産として扱われます。
(3)債務が免除されない場合(免責不許可事由)
 自己破産では、弁済し切れない債務の免除(免責)を受けることができます。
 しかし、一定の「免責不許可事由」がある場合は、免責が受けられないことがあります。
 財産の隠匿、浪費、換金行為、詐欺的な借入れなどの事情がある場合は、免責不許可事由にあたるおそれがあります。
 もし、免責不許可事由にあたる事情があったとしても、生活再生への意欲が見られ、裁判所(破産管財人)による調査にきちんと協力すれば、裁量的に免責を受けられる場合もあります(裁量免責)。都合が悪い事情も、隠さずに弁護士に話すことが重要です。
(4)免除されない債権(非免責債権)
 免責が受けられたとしても、一定の債権は免除されません。このような債権を非免責債権といいます。租税(公租公課)、罰金は非免責債権にあたります。
 破産者の悪意による不法行為に基づく損害賠償請求権(生命又は身体に被害を与えた場合は、「悪意」ではなく、「故意又は重過失」です。)、養育費や婚姻費用の請求権、破産者が知りながら債権者一覧表に記載しなかった債権(債権者が破産手続の開始を知っている場合は除きます。)も非免責債権にあたります。
(5)自己破産によるデメリット
 破産手続の開始によって、弁護士,司法書士,警備員,生命保険募集人,損害保険代理店,宅地建物取引士などの資格を失います(資格制限)。しかし、復権(免責決定の確定)により、資格の制限は消滅するので、一生涯続くものではありません(東京地方裁判所では、資格制限を受ける期間(破産手続の開始から免責決定の確定まで)は,概ね6か月程度です。)。破産をすると、そのことが官報に掲載されます。官報は公開されているものですが、一般的には、官報をチェックしている人は少ないと思われます。
 なお、破産をしても、選挙権を失ったり、破産の事実が戸籍や住民票に掲載されたりすることはありません。

3 個人再生

(1)個人再生とは
 個人再生とは、個人債務者が、債務を減額し、分割払いにする返済計画(再生計画)を裁判所に認めてもらう(認可)手続です。
 個人再生を利用できるのは、債務総額(住宅ローンや担保付債権の回収見込額のなどを除いたもの)が5000万円未満の個人債務者(法人ではない自然人)です。
 再生計画による弁済期間は、原則として3年間です(特別な事情がある場合には5年間まで伸ばすことができます。)。
 個人再生には、小規模個人再生と給与所得者等再生手続があり、以下のとおり、再生計画による弁済が必要な額に違いが生じます。
 また、住宅ローンを支払っている自宅がある場合は、住宅ローンはそのまま支払って自宅を維持しながら、他の債務を減額して分割払いにすることができる場合もあります(住宅ローン特別条項)。
(2)小規模個人再生による弁済額
 再生計画による弁済総額は、通常は、@債務総額の5分の1と100万円のうち大きい方の金額(最低弁済額要件。債務総額が1500万円を超える場合は、異なる基準で弁済総額が決まります。)、A破産した場合に処分が必要な財産相当額(清算価値基準)のうち、大きい方の金額以上である必要があります。例えば、債務総額が300万円、清算価値が50万円の場合は、再生計画による弁済総額は、@最低弁済額要件が100万円(300万円×1/5<100万円)とA清算価値基準が50万円を比べると、@の方が大きいので、100万円以上である必要があります。
 小規模個人再生の場合は、再生計画が裁判所に認められる(認可される)ためには、債権者に可決される必要があります(ただし、積極的な同意は必要なく、不同意した債権者が、債権者総数の2分の1未満、かつ、債権総額の2分の1以下であれば、債権者の可決があったとみなされます(消極的同意)。)。
(3)給与所得者等再生の弁済額
 小規模個人再生と同様の@最低弁済額要件、A清算価値基準に加えて、B可処分所得要件(弁済総額が、手取年収(総収入から公租公課を差し引いた額)から最低生活費を差し引いた可処分所得の2年分以上であること)を満たす必要があります。
給与所得者等再生の場合は、再生計画が認可されるために、@最低弁済額要件、A清算価値基準、B可処分所得要件を満たしている場合は、債権者の可決は必要ありません(債権者の意向に左右されません。)。

4 違法金融業者(ヤミ金)の対処

(1)ヤミ金とは
 ヤミ金とは、出資法に違反する高金利(年20%超)による貸付けを業とする者です。このような高金利の貸付けを行っていれば、登録業者かどうかは問題ではありません。
 このようなヤミ金は、出資法違反であり、刑事罰の対象となる犯罪行為です。
 近年は、ショッピング枠の現金化、給料や経費立替分の買取り(いわゆる給料ファクタリング、経費ファクタリング)など、一見すると、金銭の貸付けとは違うような形式をとっている業者も増えています。しかし、利用者に金銭を交付し、これに対して高額な金利をとっている実態には変わりはないため、ヤミ金と同様の対処が必要となります。
(2)ヤミ金の対処方法
 ヤミ金による貸付けは、公序良俗に反して無効であり(民法90条)、受け取った元本相当分も不法原因給付にあたるため返還の必要はありません(民法708条)。
 このため、ヤミ金に対しては、@一切支払いをしない、A支払った金額の全額の返還を求める(請求額から元本を差し引かない。)という対処をします。
 また、ヤミ金による犯罪手段を奪うため、ヤミ金が利用する預貯金口座の凍結やヤミ金の連絡用の携帯電話の利用停止を求めることも必要です。

5 その他の手続(消滅時効、相続放棄)

(1) 消滅時効について

ア 消滅時効が問題となる場合
 サラ金からお金を借りて、返済できず、住民票を移さないまま引越しをし、十数年が経過した後に、住民票を移したところ、サラ金やサラ金から債権を譲り受けたという業者から請求書が届くようになったというケースがあります。
 このようなケースでは、すでに債権の消滅時効が完成しており、消滅時効を援用(主張)することによって、債務を弁済しなくてもよくなる場合があります。

イ 消滅時効の期間
 一般の債権は、権利の行使できる時から10年を経過すると、消滅時効が完成します。
ただし、「会社」が貸主又は借主や事業のための借入れの場合は、商事債権であるため、5年で消滅時効が完成します。このため、銀行、サラ金(会社)などからの借入れの消滅時効期間は5年となります。これに対し、個人間の事業以外の借入れや信用金庫、信用組合、労働金庫からの事業資金以外の借入れは、消滅時効期間は10年となります。
 なお、改正民法の施行日(2020年4月1日)以後に発生した債権については、商事債権かどうかの区別はなくなり、消滅時効期間は、「権利を行使できる時」から10年、または、「権利を行使できることを知った時」から5年となります。通常の借入れでは、「権利を行使できる時」と「権利を行使できることを知った時」が一致するので、消滅時効期間は5年となることが多いと思われます。

ウ 時効の援用
 消滅時効が完成しても、当然に債務は消滅しません。消滅時効の効力を発生させるためには「援用」(債権者に対し、時効による債務の消滅を主張すること)が必要です。
 このため,債権者の中では、すでに時効が完成している債権を、あえて、請求し、訴訟を提起する業者も少なくありません。放置することなく、消滅時効が主張できないかを検討する必要があります。

エ 時効の「完成猶予」と「更新」について
 消滅時効の完成前に、一定の事情があった場合には、時効の完成が遅れたり(完成猶予)、やり直し(更新)になったりする場合があります。
 債務の一部弁済などの「承認」は、「更新」事由となります。債権者の中には、消滅時効の完成が間近の債権について、時効を完成させないために、少額の支払い求めてくる場合があるので注意が必要です。
 請求書の送付などの裁判外の請求(催告)は、6か月間の「完成猶予」にすぎず、「更新」にはなりません。このような催告による完成猶予ができるのは1回のみです(催告を何度も繰り返したとしても、完成猶予されるのは6か月間のみです。)。
 訴え提起などの「裁判上の請求」は、手続中は「完成猶予」され、確定判決等により権利確定した場合は「更新」されます。また、取下げにより終了した場合は、「更新」にはなりませんが、取下げから6か月間は「完成猶予」となります。

オ 時効完成後の「承認」について
 消滅時効が完成した後でも、そのことを知らず、援用をしないままに、債務の弁済をしてしまった場合には、信義則上、時効の援用ができなくなる場合があります(時効援用権の喪失)。このため、債権者も中には、既に消滅時効が完成している債権でも、執拗に少額の支払い求めてくる場合があるので注意が必要です。
 もっとも、債権者の請求を受けて一部支払ってしまっても、債権者の不当な方法(執拗な請求,暴力的な請求,欺瞞的な請求(債務の免除をもちかける,返済により完済するなど虚偽の説明をする)などにより返済をさせられたような事案では、信義則違反とならない(時効援用が認められる)場合があります。

(2) 相続放棄について
ア 相続放棄が問題となる場合
 相続があった場合、被相続人が多額の債務を負担している場合は、相続放棄をすることによって債務を免れることができます
。  また、被相続人が死亡し、めぼしい財産がなく、債務もなかったため、特になにもしないままにしていたが、数年後に、被相続人の債権者と名乗る業者から請求書が届いたというようなケースがあります。このようなケースでも、相続放棄により債務を免れる場合があります。

イ 相続放棄の手続
 相続放棄は、被相続人の死亡後に、被相続人の最後の住所地を管轄する家庭裁判所に申述する必要があります。
 被相続人の死亡前にあらかじめ相続放棄することはできません。また、家庭裁判所で手続を取らず、他の相続人に相続財産をもらわないと約束しただけでは、相続放棄をしたことになりません。

ウ 相続放棄の期限
 相続放棄は、相続人が、自己のために相続の開始があったことを知った時から3か月以内に行う必要があります。
 「自己のために相続の開始があったことを知った時」とは、通常は、被相続人の死亡の事実を知ったときです。
 ただし、被相続人に相続財産が全く存在しないと信じ、かつ、このように信じることについて相当な理由があるなどの場合は、被相続人の債務の請求を受けた時から3か月以内であれば、相続放棄をすることができます。

以上
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